レイコーン
第2章 月の屋敷
戸の向こう側には
広い広い草原と中央には丘があり、
丘の上には古めかしいデザインの屋敷が一軒あるのが見えた。
草原の向こうからは
さわやかな風が吹いていて
空には、大きな三日月が浮びやさしく、笑っているようだ。
月明かりは屋敷を照らし、丘全体は冷淡な美しさを誇っている。
シャリシャリの氷を舌に当てられたような感覚。
マールは思わず心を奪われ
戸をくぐり、草原へと足を踏み入れていた。
丘は月明かりに照らされ青白く輝く。
青色の中にあるやさしさとさわやかさ。
素直な美しさが心染み渡った。
「はぁ。」
呼吸にため息が混じる。
マールはただ何もせずぼんやりと丘を眺めていた。
「あれ?ネコは?」
気がつくと、さっきまで
マールのそばにいた猫の姿はなく
足元には冷たく冷えきった石の破片が散らばっていた。
「どこ行ったんだろ?あそこに行ったのかな?」
軽石を敷き詰めた一本の道が屋敷まで続いているようだ。
破片はその軽石だろう。