レイコーン
マールにとってそれは意外だった。
ニコスは噂好きの少年で誰にでも噂話を面白おかしく話す人気者だと思っていたから。
ニコスにとって良い友人なんだと、老人は笑って言っていた。
「ミャ~。」
ドクの話の後、ニコスは少し照れるようにマールに声をかけた。
コツン、コツン、コツン。
廊下は足音しかしない寂しい空間のはずなのに
どこか、暖かい。
「さぁ、研究室に着いたぞ」
先ほどいた部屋よりもずいぶんと、黒ずんだ扉があり、
『研究室』と書かれた時々光る札が張ってある。
ドクが指をパチン、パチンと2回鳴らすと、
『研究室』と書かれた重そうなドアが開きだした。
「さぁ、おいで」
ドクは左手をマールの方へ伸ばし、
部屋へと招き入れた。
「わっ」
一瞬輝いた、大きな光がマールから視力を奪う。
次に目を開けたとき、マールは言葉を失った。
そこには部屋は存在しない。
上下左右、足元から空にまで無数に広がる広がる満天の星々。
その部屋は、自分たちが宇宙の真ん中にいる感覚を与えた。