レイコーン
『マール!、マール・アダ・ボルフクック!!』
ぼんやり眺めていた黒板の方から金切り声がしてきた。
すでに授業は始まっていて問題を解くようにと指示があったらしい。
マールはあわてて教科書を手に取り読み始めた。
「教科書の21ページから…」
前にいた国語の先生は怒り交じりでマールを見ていた。
マールの目の前にあるのは数学の教科書。
「あっ。す、すいません。」
次の時間数学だと思っていたマールはあわてて国語の教科書を取り出し
指示された場所を読み始めた。
クラスのムードメーカが同じような事をすれば
周囲にはそんな彼らを和らげるような笑いが漂うだろう。
だけど、隣とぺちゃぺちゃと、会話している人間はいるものの
クラスの人間はマールに対して無関心だった。
どちらかと言えば次に自分が当たることを心配している人間が大半だ。
「マール、早く!」
せかす先生。
クラスの生徒たちは、マールに手を差し伸べようともしない。
叱られている彼に対して同情の欠片すらなく
注目を浴びる事のない商品は腐れ行くばかり。
彼自身はひどく居心地が悪い。