レイコーン
「あの渦巻いた扉のことだよ。」
ニコスに、そう言われマールは思い出した。
「あの扉は、ちょっと変わった奴が造った扉でな、最初にくぐった時に戻るんじゃ。」
「最初の時?」
「マール君の場合じゃと、昨日の晩じゃな。じゃから安心していいんじゃよ。」
「本当?」
マールの目はさっきまでと違い輝きを取り戻した宝石のように輝いている。
「あぁ。じゃから安心していいんじゃよ。もし帰りたい時はあそこをくぐりなさい。」
そう聞くと、マールは安心し笑みがこぼれた。
続けてドクは言う。
「じゃがな、あの扉は意思に反応する扉で通りたいと思わないと通過できないのじゃ。通過できる人には扉が見えるのじゃがマールにはそれが見えたかの?」
そう言えば扉と言えば、
マールの記憶の中にはどこに扉があったのかさえイメージできない。
「戻りたいと本気で思った時、あの扉が現れ開くんじゃな。」
「はぁ・・・。」
反射的にでたその返事には戻りたいなんて思える自信がない意思が顕著に現れている。
戻れないなら戻れないでいい。学校という生活は辛い。
「この世界への扉が開いたのは、新しい世界に行きたいとマール君が望んだからなんじゃよ。」
マールは黙り込み、うつむいてしまった。
そんな様子を察してかドクは話題を変えた。
「せっかく魔法の世界に来たんじゃ。ニコスと共に世界を回る旅に出てみてはどうじゃ?」
「・・・世界を回る・・・?」
聞こえない声でマールはつぶやく。