レイコーン

「そうじゃ、ニコスにとっては大人になるための儀式じゃ。じゃが、一人では不安でのう。誰かお供にと思っておったところなんじゃ。それに、旅をすればそのうちに、扉を見ることができるようになるかもしれんのう。」
 
正直、そんなことはどうでもよかった。
だけど、魔法の世界の旅行その言葉を聞いたとたん、直に触れることのできる希望。
マールは右手のフォークを強く握った。
まだ分からないけど、
今までとは違う生活を得ることができるのだと確信し、体が震えた。
マールが何気なく口に入れた目玉焼きは塩の焼ける香りがし、とてもおいしい。
 
食事も後半に差し掛かり、ドクが次なる口を開いた。
 
「実はのう、マール君、ニコスは騎士を目指していてな、屋敷の北にある大きな街で大切な儀式を受けなければならんのじゃ。だがニコスはその街が嫌いでの、まだ儀式に行っていないのじゃよ。わしは屋敷の管理人じゃからここを離れられん。旅の出発がてらまず、ニコスを引っ張っていってやってくれんか?」
 

しばらくマールはニコスの顔を見つめ、考え込んだ後ドクに言った。


「もちろん!」

 

「では、早速旅の準備じゃ!着替えは隣の部屋に用意してあるから好きに使ってくれればいいぞ。」

 
ドクに言われた時、マールは自分の姿を眺めた。 
さすがに普段の姿では旅する自信がない。

 
食事を終えると、マールは隣の部屋へと向かおうと立ち上がった。

ニコスを待とうとしばらく扉の前にいるとニコスは大きな声で言う。

「俺、マスターに用があるから先に行っててくれ。」

なんだかピリピリしている。

 

広間の扉は大きな扉だが思っていたよりも重くなく片手で押すと簡単に開いた。


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