レイコーン
ワイングラスへと注がれるジュース。
彼は王のぶどうジュースを一杯いただいた。
王の注いだジュースは農耕で香りも
よく『ぶどうジュース』としては納得の一品だ。
「では乾杯だ。」
ワイングラスに照らされた色は
まるでルビーを溶かしたように赤く、輝いていている。
中はひとつの小さな世界が混在しているかのようで飲むのがもったいないくらいの
高級感が漂う。
「王様。いただきます。」
マールは一口、王のジュースを飲んだ。
「…。」
マールの顔は黒焼き卵を食べたときでさえ見せなかった渋い顔をして困惑気味。
「味はどうかね?」
そう言いながら王はマールの顔を見ないでワイングラスを机の上に置いた。
「…。」
ひどい味。ひどい味だ。
良かったのは口へ運ぶぎりぎりまでで、
口へ含んだ瞬間、赤いジュースはヘドロのような味へと変化した。
工場廃水で汚れた黄色くにごった海水のような味だ。
めまいに吐き気そして、口に残る粘粘とした嫌な感触がマールをそのような顔にさせていたのだ。
「いいんだよマール君。正直になってくれて。ひどい味だろ?」
「…はい。」
顔が真っ青になったマールを見れば感想なんて聞かなくてもいい。
「実は、頼みたいことってのはこれのことなんじゃ。」