きっと世界は君のもの



( 今日ね、雑誌であの記事みたよ )

いつものように、今日の出来事をメールで送ろうとするけど、その言葉を何度も打っては、削除した。


自分からそう言って、「大丈夫だから」 っていう言葉を求めてるみたいだから、送るのはやめた。

あたしがなにも言わなくても、「心配しないで」 って言ってほしいから。


『今週の日曜日は、あたしの誕生日なのに』


きっと、彼は忘れてしまってるかもしれない。
今は仕事が楽しいと思うから、あたしなんて忘れられてるに決まってる。


『ははっ。 自分で思っといて・・・涙出てきちゃった』

涙で視界がぼやけながらも、ふと携帯のバイブが鳴っているのに気付く。

画面をみれば 着信 一葵 の文字が出ていて、あたしは慌てて電話に出た。

『もっ、もしもし』

「いま平気?」

『うん。 一葵は大丈夫なの?』

「まぁ、うん」

久々の電話、久々の声、悲しみの涙はいつしか嬉しさの涙に変わって、ポロポロと頬をつたって流れてく。


 泣いてるせいで、声震えてないかな。
 心配かけたくないから、バレたくないし。

「今週の日曜、オフだからさ。 どっか行こう」

『い、いいの?』

 ねぇ、自分から聞くのなんて恥ずかしいからイヤだけど、
 あたしの誕生日、覚えててくれたの?

「いいよ。 駅まで迎えにいくから」

『うん!』

「それじゃあね」

『あっ・・』

 あの記事のこと、本当なの?

「どうしたの?」

 でも、そんなこと 恐くて聞けない。

『ううん、なんでもない。 お仕事、頑張ってね』

 あのことは気になるけど、一葵を信じよう。
 それしか、あたしは出来ないから。

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