きっと世界は君のもの
*
時間が経つのは早いもので、今日はあたしの誕生日。
可愛らしいワンピースを着て、軽く髪の毛も巻いて、彼と同じ香水つけて。
いつもより気合を入れてオシャレした。
どこに連れてってくれるんだろ。
そればかり気になって、早く会いたいという気持ちが募りながらも、駅で彼を待ち続けた。
ふと携帯が鳴る。
一葵 という文字が出ていて、嫌な予感が過(ヨ)ぎる。
まさ、か・・・ドタキャン?
でも、今日は休みって言ってたし・・
そう思いながらも、震えた手で携帯を耳にあてる。
『もしもし?』
大丈夫、声までは震えてない。
「春陽、あのな――」
彼がなにかを言おうとしたその時、
「一葵く~ん、なに電話してるのよ。 綾つまんな~い」
女の甘ったるいぶりっこの声。
「おまえッ!!」
怒っている愛しい彼の声。
“綾”?
あぁ、そういうことか―――。
なぜか心は冷静だった。
震えていた手も、今じゃしっかりと携帯を握り締めてる。
「春陽、これは・・・」
言い訳なんかいらない。
『やっぱり、記事は本当だったんだね』
落ち着いた声でそう言えば、一瞬間があって
「記事・・、知ってたのか?」
あたしは雑誌とか興味ないから、滅多に見ない。
だからあの記事は見てない、と思ってたんだろう。
結局、あの記事は本当だったと言うことだ。