きっと世界は君のもの



時間が経つのは早いもので、今日はあたしの誕生日。

可愛らしいワンピースを着て、軽く髪の毛も巻いて、彼と同じ香水つけて。

いつもより気合を入れてオシャレした。


どこに連れてってくれるんだろ。


そればかり気になって、早く会いたいという気持ちが募りながらも、駅で彼を待ち続けた。


ふと携帯が鳴る。
一葵 という文字が出ていて、嫌な予感が過(ヨ)ぎる。


まさ、か・・・ドタキャン?
でも、今日は休みって言ってたし・・

そう思いながらも、震えた手で携帯を耳にあてる。

『もしもし?』

 大丈夫、声までは震えてない。

「春陽、あのな――」

彼がなにかを言おうとしたその時、

「一葵く~ん、なに電話してるのよ。 綾つまんな~い」

女の甘ったるいぶりっこの声。

「おまえッ!!」

怒っている愛しい彼の声。


“綾”?
あぁ、そういうことか―――。

なぜか心は冷静だった。
震えていた手も、今じゃしっかりと携帯を握り締めてる。


「春陽、これは・・・」

 
 言い訳なんかいらない。


『やっぱり、記事は本当だったんだね』


落ち着いた声でそう言えば、一瞬間があって

「記事・・、知ってたのか?」


あたしは雑誌とか興味ないから、滅多に見ない。
だからあの記事は見てない、と思ってたんだろう。

結局、あの記事は本当だったと言うことだ。

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