きっと世界は君のもの


今日はなにをしても、ずっと上の空だった。
毎日彼に送ってたメールも 送る気になれない。

そして帰宅中の今も 親友の話し声を聞いてるだけで、なにも理解してない。

「もう、春陽 ちゃんと聞いてよー」

『あ、ごめ・・・・・? どうしたの?』

謝っていたそのとき、彼女が突然立ち止まる。

「一葵さん」

え? と思いながら 彼女の視線を辿って見上げれば、液晶画面の向こう側に居る彼。

きっと CMかなにかの記者会見の様子だ。

いろんな記者の人が質問してて、その質問は当然

「小森 綾さんとの熱愛報道は本当ですか?」

雑誌の記事のことばかり。

「関係のない質問はやめてください」 とスタッフが止めに入るのを、

「俺は今日 みなさんに伝えたいことがあります」

彼がそういって遮る。


「 小森 綾さんとの関係は、なにもありません」

そう言うと、記者の人たちはすぐに “密会していたのは何故ですか” と聞き返してくる。


「詳しくはお話出来ませんが、交際をしていないのは断言します。 そしてもう一つ伝えたいのは・・・」


『まさ、か・・・』

瞬時にして、イヤな予感が過ぎる。




< 29 / 59 >

この作品をシェア

pagetop