きっと世界は君のもの


「俺には 大切な彼女がいます」


そう言い終わると同時に ザワザワと会場がうるさくなる。

『なんで・・・』

まわりでその映像を見ていた人たちは 驚きを隠せない表情で、
そんな人たちの中 あたしだけがあ然としていた。


「いつから付き合っているんですか?」
「相手のかたは一般の方ですか?」

さまざまな質問が飛び交う中、

「熱愛報道の件で、相手の方の反応は?」

その質問にだけ 彼は目を向けた。

「たくさん傷つけて、泣かせてしまいました。 誤解だということは全て話しました。 あとは彼女が俺を信じてくれるかどうかです」

彼の切なげな笑みに、しん と記者は静まり返る。

「彼女の事については そっとしておいてくれたら嬉しいです。 これ以上、彼女に迷惑はかけたくない」


「彼女のためになら 俺は俳優を辞める覚悟も出来てるんです」


最後にそう言い 記者会見の映像は終わり、

「突然の出来事で、びっくりしましたね」

などの、司会者たちの話に切り替わった。



「春陽 大切にされてるね」


賑やかな人込みの中 ただその言葉だけが頭に響いた。


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