きっと世界は君のもの
『ありが、とう』
視線を逸らし、小さな声だったけれど、それでも彼は 微笑んだ。
そして彰人はふと 彼女の目元が赤いのに気付く。
「どうされたのですか?」
彼の指が そっと触れる。
『・・・・たぶん、さっき強く擦ったからかな』
泣いた、なんて言えるわけない。
「・・・・」
彼の指先が触れているだけなのに、体があつい。
『こんなの、放っとけばいいのよ』
そう言って 自ら顔をそむけ、彼の指と距離を取る。
「儚様、何があったのかは知りませんが、この私に 話せる事ではないのですか?」
この屋敷で 一番素で居られるのは、彰人だけ。
今までは 全て話してた。
独りで、寂しいということも。
けれどいつからだろう、 あまり 彼に自分の事を話さなくなったのは。