きっと世界は君のもの



扉を一枚はさんだ距離は、近いはずなのに、けれど彼との距離を 遠くに感じてしまう。


「儚さま、実は―――」


『う、うるさい!!』


声を上げて、彼女は彰人の言葉を無理やり遮る。


可愛い子だったら、ここで自分の本音を言うのかもしれない。

けれど、


『向こうに行ってよ!』


あたしは、そんな事なんて 言えない。


「儚さま、聞いてくださッ」


『嫌よ! 向こうへ行って、これは 命令よ!』

「―――っ・・・・」

分かってる。 これは卑怯だってことは。
主の命令を、執事は逆らえない。

それを、あたしは利用してしまった。


「わかりました」


あぁ、本当に あたしは可愛くない女。
自分を守ることに必死すぎて、大好きな人を傷付かせる。


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