きっと世界は君のもの
( 向こうへ行って――! )
あの日、あんな事なんて言わなければよかったのに。
儚の心は、その後悔でいっぱいだった。
あの日、彼女が部屋から出てきた時には、もうすでに彰人は居なくなっていた。
( 彰人、? ねぇ、何処? )
会っても気まずいだけだというのは分かっていた。
けれどいくら呼んでも、姿を現さない事に不安が募っていく。
( お母様、彰人は 何処に? )
いつも傍に居てくれた。
眠れない夜も、一人ぼっちで過ごしていた昼間も。
彼が執事としてやって来た日から、片時も離れず 一緒に居てくれたのに―――
( 彰人さんなら、もう此処には居ないわよ )
その言葉を言われた時、これは夢なのだと 思いたかった。
こんなに簡単に、彼が離れていくなんて 考えもしなかったから。
執事として、これからもずっと傍にいてくれると思ったのに。