きっと世界は君のもの
彰人がいなくなり、再び孤独を感じるようになってしまった彼女。
思い煩う儚を待つことなく、日は経っていき、そして九条家とのお見合いの日がやってきてしまったのだ。
( お見合いなんてしない! )
( 駄目よ、儚。今回は行って )
いつもは彼女の味方であるはずの母も、今回は敵だった。
無理やりメイドたちにより着付けをされ、そして無理やり此処まで連れてこられた。
目の前には、それは大きな屋敷が建っている。
その屋敷こそ、九条家だ。
「仕方ないわね……」
パンパン、と彼女の母は手をたたく。
『なっ…! やだ、放して!』
いかにもSPに見える黒いサングラスをかけた一人の男が、儚の腕を掴んだ。
そして彼女を車から降ろさせ、抱きあげてはそのまま歩き出す。
『ちょ、ちょっと、降ろしてよ! お母様!』
「だって、儚がなかなか動かないんだもの」
『だから、お見合いなんて嫌だって言ってるじゃない!』
ジタバタと暴れようと、さすがは鍛えられているだけあるSP、少しも動じず、歩き続ける。