きっと世界は君のもの


彼の匂いがさらに名残惜しくなる前に、帰ろう。
帰ってからはバカみたいに自棄酒でもしようか。

『あーぁ、あたしってほんと可哀想なおん・・・・』

「あ、起きた?」


ガチャリと開き現れた彼に驚いて、言葉は詰まり語尾は声にならなかった。


あぁ、なんでこんなタイミング悪く現れるかな、この男は。

「あのさー」

たぶん、いやぜったい、次に出てくる言葉は“別れよう”でしょう。
もう分かってるんだから。

『わかってるよ。 もう来ない』

誰がわかってて“別れ”の言葉なんて聞こうと思いますか。
あたしは、泣きたくないんだから。

「は?」

『じゃ、さよなら』

スタスタと彼の横を通り過ぎて部屋から出て行く


つもりだった。


『・・・腕、放してよ』

この部屋は彼の匂いでいっぱいだから、辛いんだよね。

「むり」

『っ、』

コイツ、せっかくあたしがさっさと出て行ってあげようとしてるのに!!

「“さよなら”ってどういうこと」

『そのままの意味だけど』

なんで、睨むのよ。
わけわかんない。


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