放課後の恋
「何か用だったか?」

机の上の資料をかき集めながら美月に訊く。

「えっ?あー…コーヒーの香りがしたから…」

「それで覗いたのか?」

からかうような調子に美月はムッとしたが口をつぐんだ。

「コーヒー飲んでいくか?インスタントだけどな」

谷川は未使用のカップを取り出し湯を注いで、立っている美月に適当に座るよう促した。

湯気の立つカップを前に口をつけず見つめる美月に谷川は首を傾げた。

「飲まないのか?」

「…砂糖…ある?」

ブラックを飲む習慣のない美月はそのままでは飲めない。
谷川はガラス瓶を美月に手渡した。

「これ砂糖?かわいー…」

瓶の中には色とりどりの小さなキューブが詰まっていて美月は瓶を回しながら見ている。

「入れるのもったいないな」

この部屋に入ってから美月は初めて笑顔を浮かべた。

「そんな事言ってるといつまでも飲めないぞ」

「うん…」

美月は1つキューブを取り出すとカップに沈めた。

カップを両手で持ち、谷川を見つめる。
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