月に願いを
☆月に願いを
・平穏
世は戦国。
大小様々な国が我が領土を広げんと近隣諸国へ戦を仕掛けていた。
ここは東雲の国。
戦乱の世にあって、まだ戦火に巻き込まれず、とりあえずの平安を保っている国であった。
「結姫(ゆうひめ)様。殿の御前に清鷹(きよたか)様が城にお見えのようです」
見目よく、涼やかな若者である清鷹の姿を思い浮べたのか、侍女の志乃は部屋に戻るなりにこやかに話す。
「…清鷹が?父上とのお話が済めば私のところに来るようにと」
結姫の意図がわかりきっている志乃は少し顔を曇らせて遠回しに訊ねてみた。
「清鷹様はお父上である清重様のお使いで来られたようで…。すぐに屋敷に戻られるのでは?」
「私の顔を見るぐらいの時間はあろう?」
やはり無駄だったかと心でため息をついた志乃は頭を下げて清鷹へ伝えるべく結姫の前を辞した。
これまでも清鷹が結姫の顔を見ずに屋敷へ帰る事はなかった。
今日も必ず訪れてくれるものと信じている。
大小様々な国が我が領土を広げんと近隣諸国へ戦を仕掛けていた。
ここは東雲の国。
戦乱の世にあって、まだ戦火に巻き込まれず、とりあえずの平安を保っている国であった。
「結姫(ゆうひめ)様。殿の御前に清鷹(きよたか)様が城にお見えのようです」
見目よく、涼やかな若者である清鷹の姿を思い浮べたのか、侍女の志乃は部屋に戻るなりにこやかに話す。
「…清鷹が?父上とのお話が済めば私のところに来るようにと」
結姫の意図がわかりきっている志乃は少し顔を曇らせて遠回しに訊ねてみた。
「清鷹様はお父上である清重様のお使いで来られたようで…。すぐに屋敷に戻られるのでは?」
「私の顔を見るぐらいの時間はあろう?」
やはり無駄だったかと心でため息をついた志乃は頭を下げて清鷹へ伝えるべく結姫の前を辞した。
これまでも清鷹が結姫の顔を見ずに屋敷へ帰る事はなかった。
今日も必ず訪れてくれるものと信じている。
< 1 / 31 >