月に願いを
双葉を破り勢いづいている羽鳥軍に対して戦況はあまりいいとは言えず、大将である清重率いる東雲軍は苦戦を強いられていた。

数では羽鳥が上回っており、それを打ち破るには変則的な奇襲をかけるべきと軍議で意見が上がっていた。

その戦略には本隊とは別に少数の軍勢で敵を翻弄する必要があり、下手をすれば本隊到着までに全滅してしまう危険を孕んでいた。

清重は総大将である君主に意見を具申し了承を得た。

「清鷹。奇襲隊を率いて羽鳥を翻弄せよ」

若くして兵からの人望もあり軍略に長けている清鷹がこの任に就くのは誰もが納得するところではあったが、息子を一番の危地に追いやらねばならない清重の心中も皆が思いやった。

清鷹は清重に一礼をし、その任を引き受けた。


結姫…。
約束を守れぬかもしれぬ。

もし、俺が討たれたと知ればやはり泣くのだろうか…。
それとも約束を守れなかった俺を怒るのだろうか。
たとえ、討たれるにしても結姫のいる東雲に羽鳥を近付けさせないだけの働きをしてみせる!

そう決意した清鷹は軍の指揮を取るべく将達の前を辞した。
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