月に願いを
「申し訳ございません」

奥方は一つため息をつき志乃に顔を上げるように促した。

「そちが謝る事はない。幼き頃よりあれほど傍におれば仕方なかろう」

「結姫様は清鷹様の無事のお帰りを待っておりました。それが行方知れずなどと…」

志乃の言葉が耳に入っているのかいないのか、奥方は扇を弄びながら何やら考えに耽っている。


ようやく口を開いた奥方は志乃に告げた。

「ならば急がねばならぬな。話はわかった。下がってよい」

志乃は奥方の部屋を不安な思いを抱えて退出した。






志乃が去った部屋で結姫は再びただただ天井を見つめていた。

清鷹が行方知れず?

あの夜に会ったのが最期だと?
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