月に願いを
「結姫様。若殿がもうすぐお見えでございます」

その声に先程まではふざけてるとしか思えないやり取りをしていた結姫と志乃に緊張が走る。

「お付きの侍女の方はこちらでお待ちください」

志乃は結姫に一つ頷いて羽鳥の者と席を外した。

しばらくすると衣擦れの音がし結姫は下座で両手をついて顔を伏せた。

静かに部屋に入ってきた若殿が上座に着く。

「お初お目にかかります。結でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます」

「いつの間にか立派な挨拶が出来るようになったものだな」
< 26 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop