月に願いを
えっ?


上座に座っているのは羽鳥の若殿のはず。

でも絶対忘れる事のない懐かしいこの声は……!

結姫は思わず顔を上げた。

「しばらく会わぬうちに少しは女らしくなったか?」

「………清…鷹…?」

清鷹が恋しい余りに夢か幻でも見てるのだろうか…。

どう見ても上座で笑っているのは清鷹だった。

「清鷹?」

結姫は目を見開き、呆然と清鷹を見つめた。

「どうした?そんな顔をして。幽霊ではないぞ」

清鷹は膝をポンポンと叩いて両手を広げる。

「おいで」

「清鷹!」

結姫はぶつかるように清鷹の腕の中に飛び込んだ。

「清鷹…」

結姫の髪を優しく撫でながら抱き締める。

「辛い思いをさせたと殿より聞いた。すまぬ」

「なぜ…?清鷹は行方知れずと聞いて…それなのに羽鳥の若殿…?」

清鷹が生きて目の前にいる。
しかも自分を抱き締めて…。

結姫の頭は混乱していた。

「国境の戦いで…」

清鷹は今に至った経緯を語り始めた。
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