月に願いを
静かな廊下に衣擦れの音がし、間もなく凛と声が響いた。

「清鷹、参りました」

「入れ」

清鷹は一礼し、敷居の内側で姿勢を正す。

「父上との話は長かったな」

「少々込み入った話でしたので。結姫様にはお待たせしてしまい申し訳ございません」

結姫の姿を見ても一向に不思議がる様子もなく清鷹は詫びる。

「よい。そちらの方が大事じゃ」

「ありがとうございます」

座を立った結姫は清鷹の前で立ち止まる。

「清鷹。行こうか」

そう声をかけられた清鷹は結姫の後ろに付き従った。
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