月に願いを
清鷹も一介の家臣ではなく羽鳥城主の跡継ぎとなり結姫の嫁ぎ先として問題もなくなり、羽鳥に結姫をやれば東雲と羽鳥に挟まれている双葉も妙な考えを起こすまいとの計算も君主にはあった。

そこで結姫が羽鳥へ輿入れする事になったという訳だった。







「俺が腑甲斐ないばかりに結姫には悲しい思いをさせてしまった…」

結姫を腕に抱きながら清鷹は謝罪した。

「私は…清鷹が生きていてくれただけで十分。もう二度と会えぬかと思っていた…」

清鷹は笑顔を見せる結姫の涙を拭った。

「矢に打たれ意識が遠退く中で結姫の声を聞いたような気がしてまだ死ねないと思った」

結姫の頬を手のひらで包む清鷹の手に結姫はそっと自分の手を重ねた。

暖かい手の温もりに清鷹が傍にいる事を実感する結姫だった。
< 30 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop