月に願いを
結姫が清鷹を従えて城門へ行くと、そこには二頭の馬が用意されていた。

白馬には結姫、栗毛色の馬には清鷹がそれぞれ乗り軽やかに城門を抜けて行った。

退屈な城での生活の中で、唯一の息抜きと言わんばかりに馬を駆る結姫に、何があっても対処出来るだけの適度な距離を保ち清鷹は黙々と馬を走らせる。



二人が着いた場所は山の中腹にある大して広いとは言えないが城下が見渡せる最適の場所だった。 

「結姫様。もうこのような外出は控えられませんと…」

丘を吹き渡る風に乱れた髪を手櫛で直していた結姫は思い切り不満そうな表情を清鷹に向けた。

「二人の時ぐらい『様』はよせ。それにこうでもしなければ清鷹と一緒にいられぬではないか」

清鷹は結姫が拗ねた時に見せる幼少の頃から変わらない表情に思わず顔を綻ばせた。

「何がおかしい」

結姫はプイッと横を向き頬を膨らませた。

「せっかく二人なのにいつまでそのように拗ねている?」

清鷹は先程までの臣下としての言葉使いから普段使いの口調になった。
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