月に願いを
本来ならこのような言葉使いが許されるものではないが清鷹が元服の挨拶に登城した折、急に大人びた様子に驚き寂しがった結姫がせめて二人になった時だけは昔のままでと願ったのだった。

「清鷹が外出を控えろなどと言うから…」

結姫にとって清鷹との外出は貴重な時間で、それを清鷹本人から控えろと言われ気分を害さないはずがない。

「近隣が戦に巻き込まれつつある今、この東雲もいつまで平安でいられる事か…。結姫に何かあればそれが戦の種にならないとも限らない」

清鷹の真面目くさった顔に結姫は心の中で相変わらず堅いなと苦笑した。

「清鷹は大げさだな」

「そんな事はない……と思う。結姫がのんきなのだろう」
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