月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
達郎は白シャツに黒のジーンズといった恰好で、椅子に腰掛けていた。

机の上には『赤福』の箱があった。

「あんた結局あきらめ切れなかったのね」

箱を見ながら、あたしはベッドに腰掛けた。

二日前、達郎は伊勢行きを断念し、まっすぐ帰宅していた(半ば強制的にあたしがそうさせたのであるが)。

「昨日、伊勢まで行って買ってきたんだ」

学校が始まったら、しばらくは忙しいからと、達郎は付け加えた。

「大学はどこ行くの?」

「R大学」

「池袋ね」

「そ、江戸川乱歩ゆかりの地」

「なんで海外の学校卒業してまた日本の学校に入るの?」

「学問で身を立てることになるかもしれないから、日本の大学も卒業しとこうと思ってな」

「ふぅん」

「で、どうしたんだ今日は?」

そう訊かれ、あたしは本題に入ることにした。

「前から聞いてたんだけどさ、あんた海外に行く前、探偵やってたんだって?」

あたしの言葉に、達郎は目を丸くした。

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