月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
そこで新たに出てきた意見が、田村によるアリバイ工作説。

「つまり田村は、この乗換えを行なうことによって、何らかのアリバイ工作を行ったんじゃないかってワケ」

「松本清張や西村京太郎の世界だな」

「でも結局、この乗換えがどんな効果をもたらすのか分からなくてね…」

「それ以前に田村自身が殺されてるからな」

「そういうこと」

「…時間を気にするなら最初から新幹線に乗るよな」

「電車賃を浮かせるなら鈍行を使うわよね」

「東京駅からな」

達郎は唇を尖らせた。

先日も見せた仕草だ。

どうやら考え事をする時の癖らしい。

イトコ同士でも新たな発見はあるもんだと、変に感心をしてしまった。

「小林の方は?」

達郎にそう振られて、あたしは再び手帳に目を落とした。

「小林は、10時25分東京駅発のひかり78号に乗ってるわ」

こちらの方も確かな線と思われた。

所持品からはひかり78号のグリーン席のチケットが見つかっている。

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