月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
「しかし刺された小林は、こだま号から降りても病院に駆け込むわけにはいかなかった。理由は分かるよな、レミ?」

あたしはうなずいた。

「小林はひかり号に乗っていたはずだものね」

こだま417号発着の時間帯に刺されたとわかれば、アリバイは成立しなくなってしまう。

ゆえに小林は傷を負ったまま、4分後に到着するひかり78号を待たねばならなくなった。

おそらく刺された時点ではそれほどの傷ではないと思ったのだろう。

小林は静岡駅で身を潜めるようにしてひかり78号の到着を待った。

しかし傷は思ったよりも深く、出血は進み、ようやくひかり号に乗り込んだ時にはもう、手遅れだった。

そして小林は、デッキにたどり着いた時点で力尽きた。

「そしてオレに発見されて事件は発覚。奇妙な連続殺人事件の現場が出来上がったワケだ」

達郎はそこまで言い終えると、ホワイトボードの縁にマジックを置いた。

「でも…」

あたしには気掛かりな事があった。

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