月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
達郎のおかげで捜査方針は決まった。

それならば、その裏付けを取るのは、あたしたち警察の仕事ではないか。

なに甘えた事を考えていたのだ、あたしは。

「すみません、警部」

あたしは頭を下げた。

「謝ってる暇はないぞ。捜査班全員を駆り出して聞き込みだ」

「は、はい!」

あたしはあわてて立ち上がった。

岸警部は達郎のもとに歩み寄ると、その肩に手を置いた。

「噂にたがわぬ名探偵ですな。総監は、いい息子さんをお持ちだ」

達郎は無言で、笑みだけを返した。

岸警部も同じようにほほ笑みを返し、会議室を出ていった。

あたしもその後を追って会議室を出ようとした時、ふとある事を思い出した。

「ねぇ、達郎」

「ん?」

「あんた、掛川駅で静岡県警にあたしを呼べって言ったのよね」

「あー…、うん」

「なんでわざわざあたしの名前を出したの?」

「まぁ、事情聴取が面倒だったからなぁ」

…やっぱり。

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