絶対純愛主義
ああっ!佐伯くんっ!



茫然自失からふと我に返った私は貴斗に怒鳴った。

「貴斗っ!あんた何なのよっ!」

怒りに任せて力一杯貴斗を押しやると不貞腐れた顔で私を見る。

「あいつ、この前のクレープ屋でいたヤツだろ」

「それがあんたに関係あんの?」

邪魔された私は冷ややかな視線と口調を貴斗に向けた。

「だってキスした仲じゃん」

急にいつものチャラチャラした貴斗に戻る。

でもそんな事じゃごまかされない。

「じゃああんたはキスした子全員にこーゆー事して回ってんの?そりゃ忙しくて大変でしょ」

私の怒りを察したのか、返答に困ったのか貴斗は黙り込んでしまった。

「いつまで掴んでんのよっ!」

慌てて私の手首を離す貴斗を一睨みして、さっさとこの場を離れた。

「真帆っ!」

無視。

「真帆っ!待てよ!」

無視。

「真帆!」

私に追い付いた貴斗が肩に触れた瞬間、無言でその手を振り払った。

「俺…真帆の事、隣人の幼なじみだなんて思ってない」
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