華の世界


"その香水、毎日嬉しそうに見てたからさ"
……


家に帰って冷静になろうとしても
店員さんの一言が忘れられない。


「ニヤニヤしてたらどうしよう…」


「毎日あそこにいて気持ち悪い奴って思われてたらどうしよう…」


「どうしよう、どうしよう…」


考えれば考えるほど、増えていく変な心配…。


そもそも、あそこはお店なのであって
店員さんがいて当たり前の場所なのだ。

香水で頭がいっぱいだった私は、そこまで気が回らず
店員さんのことなんて考えもしなかった…。


「明日からどうしよう」


あそこで逃げてしまったせいで行きにくくなってしまった。


「もう行くのやめる?」


でも…

「もう香水が見れなくなる…」


それに…

「私が気楽に行けるお店はあのドラッグストアくらいしかない…」


出かけられるお店が無くなってしまうのは
私の居場所が無くなってしまうのと同じくらいつらい。


ここで行けなくなるのは困る。
やっぱり明日もう1回行ってこよう。

それから、逃げたことも謝らなきゃ。

きっと店員さんも訳がわからなくて困ってる。


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