冷たい夜は桜の色
「だから今日聞かせてほしい。なぜ毎晩ここのに来ているのかを、ここから何を見て何を思っているのかを。」
私は少し悩んだ後、隆に私がここにきている理由を話すことを決めた。
『桜を見に来ているんだよ』
「えっ?今は冬だよ?桜なんてどこにも・・・」
隆は身を乗り出すように窓から外を眺めた。
『私が見に来ているのは桜だけど桜じゃないの』
「それって・・・」
私はそのあと隆が聞こうとしたことが分かった。だからすぐに返事を返した。
『そこから見えるでしょ?一本だけ背が低い木が、その木に花が咲かないかを見に来ているの』
「でも今は冬だよ?春になれば咲くんじゃない?」