冷たい夜は桜の色

『その木は春になっても咲かないんだよ・・・』

「どうして?」

『あの木はもう死んじゃってるから・・・。』

少しの間二人の間に沈黙が流れた。




次に沈黙を破ったのは私だった。



『馬鹿だって思ったでしょ私だってわかってる、あの木が花を咲かせない事ぐらい、咲くことなんてないんだってわかってる。
でも今日は咲いてるかもしれない、もしかしたら。
そう思って毎日きているうちにもう冬になっちゃった』

『馬鹿だよね。冬に桜が咲くわけなんてないのにね』

私の話を真剣な顔をして聞いてくれる隆。







「じゃぁなんで毎晩ここに来てんだよ?」







< 16 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop