天国の丘
勘違いとはいえ、何も言い返せなかった自分に腹が立った。
自分の部屋に戻り、ベットに腰を降ろすと、腹立だしさが増して来た。
終いには枕を掴んで壁に投げつけていた。
眠気が醒めてしまい、する事無しにテレビのスイッチを入れようと立ち上がったら、ノックの音がした。
誰だろうと思い扉を少しだけ開けると、チョコレート色の彼女が微笑みながら立っていた。
さすがにキャミソールではなく、コットンのシャツとジーンズ姿だったが、スタイルの良さは少しも損なわれていない。
「さっきはごめんなさい。ほら、アンタも頭を下げて」
彼女の横合いから男がにゅうっと現れた。
「さっきは悪かったな。こいつが俺にちゃんと言ってくれなかったもんだから、つい新聞の勧誘か押し売りじゃねえかと思っちまったんだ」
(彼女が説明しようとする前にアンタが勝手に喋りまくったんじなゃねえか)
僕は余っ程そう言おうかと思ったのだが、口から出た言葉は、
「いいえ、僕の方こそ、お二人が上に越されて来たのも知らず何だかせっかくの所をお邪魔しちゃったみたいで……」
だった。
男はせっかくの所の意味に笑い出し、
「俺は新井リュウヤ。よろしくな」
と右手を差し出して来た。