天国の丘
「私、レナ。川島レナって言うの。マーサと随分親しく話してたけど、この店にはよく来るの?」
「とんでもない。今夜が初めてさ。いや、正確に言うと昨日の朝が初めてで、今夜が二度目。
今夜のライブは観に来た方がいいよって彼女に言われたから」
「そうなんだ。この店は、普段は米兵ばかりで、余り日本人の姿は見掛けないんだけど、今夜は私達も含めて結構多いみたいよ。
貴方もジャズとかブルースとかよく聴くの?」
「余り……と言うか、正直、殆ど聴かない。洋楽で聴いてたのは、ビートルズとかサイモン&ガーファンクル、それにエルトン・ジョン。
あっ、カーペンターズも好きだったけどね」
「私もカーペンターズのレコードは持ってる。貴方って何だか面白いわね」
ろくに会話もしてないのに、面白いも何もないものだ。
「そうかな、それより、僕から見れば君の方が余程面白い人に見えるけど」
「そうね。じゃあ面白い者同士で乾杯しましょうか?」