天国の丘
こっちを指差しながら、リュウヤさんに何か耳打ちをし、右手を軽く上げ、唇だけハーイと動かした。
ほんの数秒間だけど、ステージ上の二人とのやり取りが店内の全員に見られ、意識の対象にされた。
ほんのちょっぴり特別な視線を感じながらも、嫌な気分ではなかった。
隣に座るレナまでもが、そういう眼差しを送り始めている。
リサとリュウヤさんのステージが始まった。
その夜体験した感動は、どう言葉に言い現して良いのか思い浮かばない程、素晴らしいものだった。
身近に聴く生の音が、これ程までに人の心を揺さぶるなんて思いも寄らなかった。
リサが歌った曲は、全て初めて耳にするものだった。
歌詞は全部英語だから、意味は丸っきり判らないけど、不思議と心に伝わって来た。
彼女の声は何処迄も伸びやかに、そして物悲しく切ない位に美しかった。
僕はオープニングの第一声から心を奪われていた。