天国の丘

 リサのボーカルを優しく、そして柔らかくサポートするリュウヤさんのピアノやサックスも素晴らしかった。

 初めて聴く僕にも、この二人が心の底から結ばれてるんだなと判る位、息がピッタリでその演奏に、しばし時を忘れていた。



 どれ位の時間が経ったのだろうか。

 リサがラストの曲ですと言った。

 ゆっくりとしたリュウヤさんのピアノに、彼女はスローなバラードを被せた。

 数分後、割れんばかりの拍手と喝采の中、僕は知らず知らずのうちに涙ぐみ、立ち上がっていた。

 そして、ステージに向かって、思い切り手を振っていた。

 暫くして、ステージを終えた二人が、僕の方へやって来た。

 まだ興奮が覚めやらぬ僕は、二人の姿を見て完全に舞い上がっていた。

 リュウヤさんが僕に抱き着き、そして髪をくしゃくしゃにするようにして頭を撫でた。

 そして、リサが頬にキスをしてくれた。

 頬にキスなんて、まるで外国映画のワンシーンみたいだ。

 普通、日本人がそんな事をすると全然似合わないものだが、チョコレート色の肌をしたリサがすると、自然な感じがした。

 すっかりのぼせ上がっていた僕は、

(こんなに素晴らしいミュージシャンと僕は知り合いなんだ!)

 と、声を高らかに自慢したい気分になっていた。




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