天国の丘
「ヘイ、コーイチ、随分といかした彼女じゃないか。
でも俺が思うに、お前さんが彼女を乗りこなすにはもう少しビギナー用のガールフレンドと経験を積んでからの方が良さそうな気がするんだけどな」
リュウヤさんの冷やかしに、僕は思い切り動揺してしまった。
リサも笑いながらリュウヤさんと一緒になって冷やかしてくる。
レナの方も僕と同様に困ってるだろうと見ると、何と一緒に笑って僕を見てるものだから、尚更の事、僕の血は逆流し、しどろもどろになっていた。
「それより、二人共ミュージシャンだなんて一言も言ってなかったじゃないか。びっくりしたよ」
「俺達に職業は何をなさってますか?なんて聞いて来たっけ?」
「いや、それは、聞いてなかったかも……」
「私達の事より、コーイチがどうして今夜のライブを判ったの?」
リサの質問に、僕は昨日の朝の出来事を話した。
「そのハミングの上手いルンペンてえのがマーサの知り合いなのか?」
三人共、僕の話しに興味を惹かれたようだ。
「うん。だと思う。彼女は何も話してくれなかったけどね」
「だからこそ深い繋がりがある人なのかもよ」
レナの言う通りだと思う。
ひとしきり、その話題で盛り上がったが、そんな事よりも、僕はこの夜の出会いを最高に楽しんでいた。
リサの身体にアジアとアメリカとヨーロッパとアフリカの血が幾つも混じり合ってると知り、意味も無くただ、
「スゲェ、スゲェ!」
と、目を丸くしてみたり、リュウヤさんが、実はかなり名の売れた音楽プロデューサーと知って、思わず、
「ウッソー!?」
と言ったら、しこたま彼に頭を叩かれたり。
レナがリサとリュウヤさんの大ファンで、僕と二人が同じアパートの住人だと知ると、自分もそのアパートに越すと言って、本気で羨ましがった。