天国の丘

 彼には寒さを凌ぐ場所が在るのだろうか。

 あの時見た姿から察すると、ちゃんとした住まいが在るとは思えない。

 福生は郊外だから、都心より二、三度、下手をすれば五度位体感温度が低い。

 雨や雪、風などから身を隠せるようなビルとか地下街も無い。

 黒い塊となって動かぬホームレスのように、T・Jも何処かで凍えてるのではないだろうか。

 そんな思いを抱いたまま叔父と会った。

 ホテルのレストランで食事をしながらいろいろと話しをしたが、内容は案の定、僕の身の振り方についてだった。

「浩一、何時までもブラブラしてないで、そろそろ先の事を考えてみたらどうだ?」

「別にブラブラなんかしてないよ。ちゃんと働いている」

「働いていると言ったって、今の仕事をどれ位続けるつもりなんだ?高校を卒業してから、一年と同じ職場に居た事が無いじゃないか。
 確かにお前は早いうちに両親を亡くし、普通の家庭の子に比べれば恵まれているとは言えん。
 けど、お前の母さんは、お前がいい大学に入って、立派な姿になるのをずっと夢見てたんだぞ」

 母の事を言われると辛い。





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