天国の丘
マーサの元で働くようになると、アパートの他の住人達も顔を見せるようになり、今迄以上に親しい付き合いになっていった。
他人と親しく付き合うなんて、高校卒業以来、初めての事だった。
ずっと、必要以上に他人と距離を置いて関わる事を避けてた僕だったが、去年のクリスマス・イヴ以来、何かが変わって来た。
そういった変化というものは、不思議と本人よりも周囲の者の方が敏感に判るらしい。
「ボウヤ、アンタ段々良い顔になって来たよ」
レナの前でマーサからそう言われた時は、本当に顔から火が出る位恥ずかしかったけど、反面すごく嬉しかったりもした。
「初めて見た時は、何処か暗くて影が薄い感じだったけど、今のコーイチならウチの人から乗り換えてみようかなって気になるもの」
「おい、リサ、幾ら何でも俺の目の前でそれはねえだろう」
「あははは、大丈夫、冗談よ。レナちゃんとの友情迄壊したくないもの」
そんな会話の中で過ごす一日は、二十四時間が十時間位の長さにしか感じられない位に早かった。