天国の丘
今度は、一転して、しっとりと皆、聴き入っている。
歌い終える度に惜しみない拍手が湧き起こる。
もう終わりかなと思うと、T・Jが自分のウォッカの瓶をフォークで叩きながらリズムを取り出し、リュウヤさんに目で合図を送った。
T・Jの叩くリズムに合わせて、リュウヤさんが得意のボイスパーカッションを入れる。
すると、タイミングを図ったかのように、リサとレナが手拍子を打ち、ハミングを始めた。
T・Jが最初のフレーズを歌い出す。
リサとレナがハーモニーを付ける。
リュウヤさんのボイスパーカッションが、本物のウッドベースみたいに聴こえる。
僕の全身に鳥肌が立っていた。
100万払ったって、こんな最高なライヴにはそうそうお目にかかれるものじゃない。
何度も掛かるアンコールの声に、T・J達は応え続けた。
どれ位歌い続けていたのか覚えていないが、切りの良い所で、T・Jが、
「そろそろラストにしようか」
と言わなければ、きっと僕達は朝迄そこで歌い続けていただろう。
僕達は、T・Jがラストの曲を歌い出すのを、芝生の上に腰を降ろして待った。
彼は、初めて会った時のように、目を閉じ、空を見上げるようにして歌い出した。