天国の丘
「気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど、どうしてT・Jの事そんなに頑張ってるの?」
「どうしてって言われると……」
彼女はそのまま言葉を濁し、無言になってしまった。
「気を悪くした?」
「全然、そうじゃなくて……どう話したら良いのかなって考えてたの」
余り深く考えずに聞いてしまった質問に、まさか考え込む程の理由があるなんて思ってもいなかった。
単純に、T・Jをもう一度輝かせたいとか、七月のバザーの時みたいに、彼の素晴らしいステージを観たいから……
そんな言葉が出て来ると思っていた。
その事を彼女に言うと、
「勿論、それが第一の理由だけど、単純に彼の為だけじゃないの」
何時も以上にゆっくり歩いて来たつもりなのに、もう彼女のアパートの目の前だ。
話しはまだ終わっていない。
「着いちゃったね……何か中途半端な感じになっちゃったけど、又、明日も……」
「ねえ、そこの公園で少し話さない?」
彼女はそう言って、来た道を十メートル程引き返した所に在る児童公園に向かった。