天国の丘
僕は、丁度目の前に在った自動販売機でジュースを買う事にした。
「何、飲む?」
「ダイエットコーク」
「それって不味くねぇ?」
「慣れればそうでもないよ」
「カロリーとか気にしてんだ?」
「これでも一応嫁入り前の乙女だから」
その言い方がレナらしからぬものだったから、思わず笑ってしまった。
彼女も一緒になって笑った。
ダイエットコークと缶コーヒーを手に、二人は公園のブランコに腰を降ろした。
「高一の時、父が浮気して外に愛人を作ったの……」
それが、さっきの話しの続きだとは、全然判らなかった。
「すぐに母にばれたけど、母は何も言わなかった。言えなかったの。
言えるわけがなかったのよ……。
自分も浮気してたから……。
他に好きな人が出来たら、とっとと別れてしまえば良いのに、私の為だとかなんとか理由を付けて、結局は世間体ばかり気にして、表明上だけの家族を装ってた……。
そんな中で生活してるのが嫌で、私、ちょっとグレたの。
毎晩遅く迄出歩いて、六本木とか赤坂とか遊び回ってた……。
その時、たまたま一軒のライヴハウスに入って、音楽に目覚めたわけなんだけど、まだその頃は聴いているだけで満足してる状態だったの……」
彼女の話しは、まだ続いた。