天国の丘

 彼女と別れ自分の部屋に戻っても、モヤモヤした胸の内が収りきらなくて全然寝付けなかった。

 染みだらけの天井をじっと見上げながら、僕なりにマーサの言葉を考えてみた。

(一時の思い入れ……)

(引っ張り出す……)

(彼の何を判ってるの……)

 僕らの胸の内は至ってシンプルなものだ。

 T・Jと過ごした至福の一時をもう一度味わいたい、そして一人も多くの人にその感動を分け与えたい……

 それ以上の何ものでも無い。

 マーサなら僕らのこの想いを理解してくれると思っていたのに、どうしてなんだろう……

 そう考えれば考える程、マーサの気持ちが判らなくなってくる。

 次の日、僕は店に行く前にリュウヤさんの部屋を訪ねた。

 昨日の事を話す為だ。





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