天国の丘
部屋をノックすると、眠そうな顔をしたリュウヤさんが出迎えてくれた。
「リサを口説きに来たんなら、奴は今シャワータイムですっぽんぽんだ。済まんがもう少し待ってくれ」
「何寝ぼけて冗談言ってんすか。リュウヤさんに話しがあって来たんです」
「俺?やめろよ。悪いけど、俺ノンケだから、ユウスケやシンタロー達とは違うんだ」
「もう、真剣な話しをしに来たんですからふざけないで下さい。怒りますよ」
「悪い悪い、判ったからそう大きな声を出さないでくれ。生憎と俺様の脳味噌は、今日は定休日なんだ。だから余り難しい話しは無しにしてくれよ」
多分、朝迄飲んでいたのだろう。
リュウヤさんの全身からアルコールの匂いが漂っていた。
リビングに通されると、リュウヤさんがコロナを二本、冷蔵庫から取り出し、一本を自分で飲みながら、もう一本を僕に寄越した。
「朝からビールですか?」
「俺にとっちゃこれはミネラルウォーターさ。飲まないなら、俺が貰うぞ」
「いや、飲みます、頂きます」
ライトな苦みが喉を通り過ぎ、起きたてで幾分ボヤケてた脳味噌の具合が何だかしゃきっとしたような気分になった。
浴室から鼻歌が聞こえて来る。
ドアが音を立てて開き、バスタオルで頭を拭きながら全裸姿のリサが出て来た。
思わず目が合ってしまった僕は、慌てて目を伏せ、俯いた。
「やだぁもう、誰か来てるなら来てるで言ってくれればいいのに」
そう言ってリサは寝室の方へ消えた。