天国の丘

 僕の住んでるアパートはかなりの年代物だ。

 一階が古着屋と雑貨屋になっていて、二階と三階がアパートになっている。

 僕の部屋は三階の角部屋。

 広さは充分過ぎる程だが、元々が居住用ではなく倉庫だった建物を改造したものだから、冬は結構寒い。

 同じ階に星野さんという画家の卵が住んでいて、部屋をアトリエみたいにして使っているが、本当の住まいはここから歩いて一分と掛からない米軍のハウスだ。

 絵を描く時しかここに来ない。

 下の二階の住人はカップルが二組。

 と言っても、男女のカップルではなく、所謂ゲイのカップルだ。

 男同士の方は、ユウスケさんとシンタロー君といい、ユウスケさんは八王子のバーでバーテンダーをしている。

 シンタロー君は役者志望で時々テレビや映画にエキストラで出ている。

 女同士の方はミミとナナという名だが、どうも本名は違うらしい。

 ショートヘアのミミさんは、何時でも二の腕を出し、肩を怒らしている。

 そのマッチョぶりは、なかなか男前だ。

 立川のフィットネスクラブでインストラクターをしているらしい。

 相方のナナちゃんは、すれ違う人間の誰もが振り返る程の美人で、こんな美しい女性が男性を受け入れられないなんて、どうして世の中はこうも不条理に出来てるんだろうと思ったものだ。

 ちなみに彼女の職業はクラブのホステス。

 正体を知らずに近付く客達の憐れさが目に浮かぶようだ。

 彼ら達とは比較的友好的関係を築いて来れた。




< 7 / 90 >

この作品をシェア

pagetop