天国の丘
『突然だけど、店を閉めます。
正直言うと、結構前からやってくのに苦労してたんだ。
ここんとこの円高のせいで、アメリカさんも財布の紐を閉めちゃっててね。
前々から権利を売ってくれないかという話しもあったんだ。
儲けも無いのにこれ迄店をやっていたのは、T・Jの事があったからなの。
あの人の帰って来る場所を守り続けてたんだけど、もうそれも必要なくなったし。
店の名前も、サッド・マン・スリーなんて付けたのに、その三人が三人共、天国に行ってしまった。
いつかはT・Jが扉を開けて、よお!て入って来ると信じてたんだけど、結局あの人は、たったの一度も階段を降りては来なかった。
すぐそこ迄は何度も来てたようだけどね。
前に一度、あの人とどういう関係だったの?って聞いて来た事があったよね。
多分、皆は恋人同士だったのではと思ったんじゃないかしら。
本当の事を言うと、あの人とはただの一度も寝た事が無いのよ。