桃色の空
さて、と……。
どこでお弁当を食べようか。
教室に、もしかしたら麻美がいるかもしれない。
戻るの、面倒だなぁ。
そんなことを考えていると、
サァッと風が吹いて、桜の花びらが舞い、
廊下の窓から入って来た。
甘い香り。
そうよ、今は春なのよ!
せっかくのお弁当だし、一人だけだし、
なにより桜の木も満開だし。
桜の前のベンチでお昼にするにはぴったり。
私は、思わず軽くなる歩調で、廊下を横切り、
靴を履き替えて、外へ出た。
一番、大きな桜の木の前に行く。
咲き乱れる、本当にそんな言葉がぴったり。
一点の汚れも許されない、
ずっと見ていると、中毒にでもなってしまいそうなほどの美しさ。
その一色は、私の脳内までその色に染めてしまいそうだった。
「綺麗……」
綺麗。
思わず、口から漏れた言葉。
ありきたりな言葉だけど、これ以上ぴったりな言葉はないだろう。