天気予報は暴風のち…Love!?
果穂は大した抵抗もせずに屋上への扉を俺とくぐった。

「何…?」

俯き、コンクリートの床を見つめながら小さく訊ねる。

「これ」

果穂の手のひらを開かせて取り上げたピアスを落とした。

「この前返すの忘れてた」

『この前』という言葉に果穂の身体に力が入る。

「あ…りがと…」

「…悪かったな」

「え?」

弾かれたように顔を上げた果穂と正面から目が合い、柄にもなく心臓が跳ねた。

「いろいろ」

ピアスをなかなか返せなかった事、無理矢理キスした事、カレシにバラすって脅した事。
その他全部を含めた『いろいろ』。

「ふふっ」

果穂がいきなり笑う。

「何が可笑しいんだよ?」

「藤沢くんって…噂と違うんだね」

噂ってどんな噂だよ?
果穂の口調からロクでもないってのは想像出来るけど。

「そーか?」

「うん」

そう返事したきり果穂はまた黙ってしまった。
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