夜明けのカンタータ《詩集》
春の呼吸
届いた一枚の写真
そこに広がる淡い桃色に
貴方の姿を見たとき
私はしずかに
息を止めたのです
あれから幾月幾年がたち
子供だった私と貴方は
何時の間にか大人になり
それぞれの笑い方を覚えました
零れおちるさくら
なみだはしずかに私を慰めて
終わらぬ春を
この一枚の
桃色の絨毯に咲かせました
ことばほど無力なものはないと
いつか無邪気に笑った貴方の
えくぼがどうしようもなく
いとしく
いとしく
咲き誇る桃色のなか
知らない笑顔でわらう貴方の
その喉から
左胸から
ただしずかな
それでいて熱をもった
春の呼吸を感じたのです